教え方のコツ2”学習するための関わり方”の記事
自閉症のAくん(5歳)はひらがなの読み書きができ、「くつ」「とけい」など、絵を見て書ける物の名前は30個ほどあります。
指導者 「Aくん、学習を始めますよ」しんごうの絵カードを見せる。
Aくん 絵カードは見るが書けない。
Aくん 目は天井に向き、えんぴつを振っている ★
Aくん 絵カードを見ないで、えんぴつを振ったまま ★
指導者 「Aくん、よく見て、これはなあに?」
イライラして体をゆする。 ★
濁点を付け忘れ、字もさっきより汚い。
指導者 「こ、じゃないでしょ。ご、よ。もっときれいに書きなさい。やり直し!」消しゴムで消す。
Aくん さらに不機嫌になり、泣き始める。
指導者 「大丈夫よ、Aくんならできる。10回書くまで頑張ろうね」
Aくん しかし、泣き止まず、学習を終了。
1.学習開始時は、やさしめの課題で態勢を作る
Aくんの今日の学習の目標は、新たに「しんごう」が書けるようになることです。
ところが、いきなり初めて「しんごう」を書かせようとしたため、Aくんは何を書いたらよいか分からず、混乱して手が止まってしまったようです。
そもそも、自閉症児は、新しいことや変化が苦手ですから、学習開始時は、ひらがなの模写や、Aくんがすでに書ける「くつ」「とけい」から取り組み、
書くことに集中してきたところで、「しんごう」を書く練習に入った方が良いでしょう。
学習導入時の教材は、子どもがすぐできるものを使い、徐々に新しい課題を取り入れていきます。
ただし、導入課題は数分にとどめましょう。長すぎると、集中力が途切れてしまいます。
2.試行間反応をコントロールする
Aくんが字カードを見て「しんごう」と書けてからの様子が問題です。
褒められても嬉しそうにするわけでもなく、視線は定まらず、えんぴつを振る常同行動が出て、確実に意識レベルが下がってしまいました。
このように、学習の合間に学習行動以外の動きが出ることがあり、これを「試行間反応」と呼んでいます。
次の学習行動のためにスタンバイしているのは、良い試行間反応です。
逆に、集中が途切れて常同行動や立ち上がり、おしゃべり等が出るのは、悪い試行間反応です。
Aくんの学習場面では、悪い試行間反応が何度も見られます(★)。
悪い試行間反応が繰り返されると、途切れ反応がむしろ強化されるので、集中持続力は身につきません。
学習の目的は、「上位脳を使い続ける」ことにあるので、「正答ならよい」というのではなく、「集中持続」という点に視点を当てて対応しなくしてはなりません。
よって、試行間隔も重要です。
悪い試行間反応が出ないよう、「手はひざ」などの指示を入れつつも、集中が途切れる前に次の学習行動を促しましょう。
プロは、このタイミングが上手いのです。
また、「いちいち褒めること」が、途切れを誘うこともあります。
コロロでは、試行ごとに褒めることはせず、学習終了時に褒めるようにしています。
3.できないことを叱ってはいけない
Aくんは、一度は字カードを見て「しんごう」と書けたものの、カードへの注視が続かず、集中が途切れています。
この状態で、「ちゃんと見なさい!」と叱られても、意識レベルが下がっているため、何を叱られているのかAくんには分かりません。
さらに指導者の叱り口調が、Aくんの不機嫌反応を引き起こす引き金となっており、学習態勢を崩してしまいました。
このように、学習指導を行う上で、過剰に褒めること、そしてできないことを叱ることは、どちらも子どもの概念理解につなげるための促進刺激とはなりません。
相手が「No」と言ったから、自分の反応を変えただけに過ぎませんので、本当の意味で「分かった」わけではなく、指導者が代わると、できなくなることが多々あります。
できないことを叱るのではなく、できない原因を分析し、できるよう教えるには、どのような方法が良いか考え、工夫することが指導のコツといえるでしょう。
褒める場合も、「YES(合っている)」が子どもに伝わればよいのです。
課題に取り組む子どもの動きを、最後までさえぎらずにいることで、「間違っていない」ということ=「YES」が伝わることもあります。
4.目標は1つに絞る
Aくんのこの時間の学習目標は、絵カードを見て「しんごう」が書けるようになることです。
Aくんは「しんごう」と正しく書いたつもりなのです。指導者が「字が汚いから」という理由で、やり直しをさせるとどうなるでしょう?
Aくんは「きれいに書きなさい」という意味には捉えず、「間違っている」=「No」のサインと捉え、「しんごう」とは違う文字を書こうとしかねません。
こうしたコミュニケーションギャップに指導者が気付かないことで、Aくんのように、学習態勢を崩してしまうケースは非常に多く見られます。
目標以外の部分(Aくんの場合、字の乱雑さ)には目をつむり、別の機会に字形を整えることを目標とした課題に取り組むようにしましょう。
5.学習をノルマ化しない
「その課題は、何問すればいいですか?」「学習は何分間すればいいですか?」という質問をされることがあります。「できた」「分かった」と互いに実感でき、もうちょっとやりたい、もうちょつとさせたい、というところで終わりましょう。
「学習プリントを5枚」とか、課題の種類や順番などを決めすぎると、いつのまにか子どものこだわりになって、変更不能になることがよくあります。
こうした学習の仕方では、課題ができても適応力が落ちていきます。
自習ができるのは良いことですが、指導者(親・教師)の指示で開始、終了、変更ができるようにしましょう。
たとえ、学習前に用意したプリントがあったとしても、子どもが集中できていなかったり、状態を崩しかねないようなら途中で切り上げ、
シール貼りなど別の課題に切り替えたり、歩行に行き、意識レベルが上がったところで再度、目標とする学習に取り組むなどの工夫をしましょう。
その時々の目標をクリアし、子どもが「できた」「分かった」と実感できた(と指導者も共感できた)ところで良い状態で学習を終える(「タイミング」を図る)ことが、指導のコツといえるでしょう。
6.学習を日課にしていくためには
ところが、Aくんの場合、学習によって(はっきり言うと、学習中の指導者の教え方がまずい)不機嫌反応を引き起こし、その状態を改善できないまま、仕方なく学習を終了しています。
こうした不機嫌反応がパターン化すると、学習に対して拒否反応を示すようになり、学習態勢すらとれなくなってしまいます。
子どもの意識レベルが高く、良い態勢がとれているところで終えることで、学習後も良い状態が持続しやすく、また次に学習を行う際に、よりスムーズに学習態勢に入ることができるようになるはずです。
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この記事をご紹介したのは…

集団に適応できないなどの問題を抱える子どものための指導方法を研究・実践する療育機関で、
現在各地の教室で多くの子どもが療育を受けています。
さまざまな問題に対し、独自の療育システム(コロロメソッド)による具体的な対応法・療育方法を提示し、家庭療育プログラムを組みます。
コロロメソッドとは、40年に渡る療育の実践の中で得た知見から体系づけられた「ことばが増える・伝わる・問題行動が減る」療育プログラムです。
詳しくは、ホームページをご覧ください。
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