発達プログラム107号「学習プログラム」面接実況中継より
「余暇時間、マイペースになっていませんか?」の記事をご紹介します。
コロロの教室では、コロロメソッドのブログラムに基づいて子ども達に対して療育指導を行います。その様子をふまえ、月1~2回、お母さんとスタッフの面接があります。
面接では、お子さんに関する様々な悩みや気がかりについてご相談にのります。
ただお話を聞くだけでなく、今日からすぐ取り組める、具体的なプログラムを呈示します。
お母さん達はどのような悩みを持ち、スタッフはどのように回答しているのでしょうか。
面接の様子を、ちょっとのぞいてみましょう。
ひろし君は学童教室に通う、小学校5年生のお子さんです。
日常生活の決まった挨拶ややりとりにはスムーズに答えられ、身の回りのことは自分で出来るようになってきました。
また学習は現在、第三段階の説明文や物の順番の書き出しに取り組んでいます。
ひろし君のお母さんは最近、夕食の時の様子で気になることがあるようです。
【余暇時間、どのように過ごしていますか。】
母「最近夕飯を食べるスピードが遅くて困ってるんですよ。待っていれば全部食べ終えるので、食欲がないわけではないみたいですが…。」
スタッフ(以下ス)「それは困りましたね。夕食前、ひろし君は何をして過ごしていますか。」
母「私が夕食の支度をしている間は、好きなビデオを見たり、絵本を読んだりして、わりと静かに過ごしています。」
ス「好きなビデオですか?それらがこだわりになっているということはありませんか。」
母「それはないと思います。何度か声かけは必要ですが、用事を言いつければビデオを途中で止めて指示通りに行動することができますから。」
ス「それではどんな姿勢でビデオや絵本を見ていますか。」
母「私が一緒に居るときは正座で見ていますが、私が見ていないといつの間にかソファーに横になって見ていることが多いですね。」
ス「あらあら、それでは随分マイペースな状態で過ごしているんですね。」
母「高学年になって学校から帰る時間が遅くなったんですよね。疲れているだろうしゆっくり過ごさせてあげた方がいいかなと思っていたんですが、良くないですか。」
ス「ええ、一息つく時間があってもよいですが、本人の好きなことを認めすぎてマイペースになるのはよくないですね。長時間そのように過ごすと頭を使わずにパターンで行動してしまうなど、意識レベルが低下し、目的意識を持った行動が出来なくなってしまうのです。食事の遅さもこの意識レベルの低下によって行動が途切れた結果だと思いますよ。食事後の状態もあまりよくないんじゃないですか。」
母「先生お見通しですね。じゃあ途切れないように声かけしたらいいですか。」
ス「いえ、それでは解決にはなりません。最も大切なのは帰ってからの過ごし方ですね。今はほとんどの時間にひろし君が好きなことをして過ごしているんですよね。」
母「静かに過ごしているからいいと思っていたんですが…。下校してからの余暇時間、どんな過ごし方がいいんでしょうか。」
ス「ビデオや絵本がいけないというわけではありません。それらを認めるにしても、まず姿勢に注意が必要ですね。寝転がったり、大きく姿勢がくずれたりしてしまうと、どんどん意識レベルが下がります。」
母「やっぱり正座がいいですかね。」
ス「もちろんです。姿勢を正すだけでも意識レベルは上がります。
他にも背もたれのない椅子に背筋を伸ばして座ってもよいですよ。同一姿勢を保持できていることがポイントです。」
母「実は最近正座が続かなくなっていて、結局私も仕方なく自由な体勢を認めていました。椅子に座っていても、工夫ひとつで意識レベルを保持できるんですね。」
ス「そうですよ。それから大事なのは環境設定です。本人の関心がある物はあえてお母さんが管理し、マイペースに使わせないようにしてください。教室でもプリント学習で間違ったとき、お友達の消しゴムを勝手に使ってしまったことがありました。今は見える位置に置かず、ひろし君が「先生、消しゴムを貸してください」と言ったら渡すようにしています。ビデオも同様にまずお母さんに見てもいいか聞いて、許可をもらうことに習慣づけてみましょう。少し考えてから行動するというよいパターンを作ると言語野を使い、高い意識レベルを保持することに繋がります。」
母「マイペースにさせないようにできる限りの設定はしないといけませんね。」
ス「そうなんです。今はまだお母さんの目の届く範囲内で過ごしましょう。そうすることでマイペースの小さな芽に早く気づくことができますから、心がけてみてください。余暇と聞くと、「くつろいで好きなことをする」とイメージしてしまいがちですが、それは自分の中でやりたいことの選択肢があり、尚かつ「どれをしようかな」と考えて決める言語力があってこそ可能なことなんです。ひろし君の場合、余暇と言えどもお母さんが時間管理してよい段階ですし、そうすることでその時間を有意義に過ごすことができるんですよ。」
【余暇時間の過ごし方】
母「でも、夕飯前に一緒に過ごす時間はなかなか作りにくいんですよね。
今、家事しながら指示できること言えば、立位などの静止トレーニングや書字ぐらいしかないような気がします。私自身もパターンにはまっているのか決まった過ごさせ方しか思い浮かばなくて・・・。」
ス「ーエ夫することで、本人の意識レベルをあげることはできると思いますよ。例えば、台所用品を使ってトレーニングをしてみてはどうですか。お盆の上にピーマンなど不安定な物を立てて載せ、立位に取り組んでみましょう。倒れないようにと手の高さや動きへ意識が働きますよ。書字もいつも使っているカードではなく、チラシの写真を見て書字してみるのはいかがですか。「くだものだけ書き出す」など指定しても良いでしょう。ところで、お母さんのお手伝いすることはありますか。」
母「指示をしたら手伝ってくれますよ。以前は私がしっかり隣についてさせていましたけど、最近では一人でできるお手伝いが増えてきました。」
ス「どんなお手伝いをしていますか。」
母「そうですね。新聞を取ってくるとか、お風呂を掃除するとか。洗濯物の取り込みも出来ますよ。」
ス「お手伝いのようなよい行動もマイペースに行っていると単なるパターン行動やこだわりに発展してしまうことがあります。そういう点は大丈夫ですか。」
母「そうですよね・・・お手伝いでも、そういう落とし穴あるんですね。そういえば、新聞を取ってくると必ずお父さんに渡さないとだめなんですよね。お父さんが最初に読むからいいかなと思ってたんですけど…。でも、せっかく出来るようになったのにさせないのは勿体ないし、どうしたらよいでしょうか。」
ス「お手伝いをさせないというのではなく、これまでのお手伝いをレベルアップさせるよう、その行動の中に条件を付け加えていけば良いのです。例えば新聞を取ってくるお手伝いも、誰に渡すかまで先に指定しておくことです。洗濯物のお手伝いは、取り込むだけでなく畳むことまで出来ますか。」
母「何回声かけしても、途中でやめていたり、適当においてあったりと最後まで出来ていないんですよね。」
ス「そうですか。それでは、衣類毎に分けて畳んでいくようにしてはいかがですか。そのためにはまず取り込んだものをタオル、シャツ、下着、靴下というように分類させた方がよいですね。分かりやすいようにカゴ毎に分けて入れるようにしましょう。例えば、タオルが全部畳み終わったら、お母さんに『タオルを畳み終わりました』と報告して、チェックしてもらうようにしましょう。よくできていたら次のカゴへ、出来ていない場合はやり直しです。全部終わった時点だと、チェックも大変ですから、こまめにしておくとよいでしょう。」
母「はじめはみっちり付いてさせないといけないですね。」
ス「そうです。これまでのお手伝いから一歩進んだ課題になりますし、まずは確実にやり遂げられることが大切ですよ。洗濯物のお手伝いといってもこのように少しパターンを変えることで、頭を使って選択・判断するようになり意識レベルが上がりますよ。」
母「余暇時間と言ってもまだ目を離してはいけませんね。」
ス「その通りです。まだ一人で余暇時間を過ごすには早いですね。一旦意識レベルが下がってしまうと、引き上げるのに時間がかかってしまいますからね。まずはお母さんと一緒に過ごす中で、高い意識レベルを保つとともに、お母さんの役に立てるお兄さんなることを優先させましょう。」
母「はい、来年はいよいよ6年生ですしね。早速今日から取り組んでみます。」
発達プログラム No.131 生活動作を身につける part2 では、洗濯物の畳み方なども説明しています。
1983 年創立。自閉症、広汎性発達障がいなどの診断を受けた子どもや、
集団に適応できないなどの問題を抱える子どものための指導方法を研究・実践する療育機関で、
現在各地の教室で多くの子どもが療育を受けています。
集団に適応できないなどの問題を抱える子どものための指導方法を研究・実践する療育機関で、
現在各地の教室で多くの子どもが療育を受けています。
コミュニケーションがとりづらい、問題行動やこだわり・パニックが頻発して家庭療育がままならないなど、
さまざまな問題に対し、独自の療育システム(コロロメソッド)による具体的な対応法・療育方法を提示し、家庭療育プログラムを組みます。
さまざまな問題に対し、独自の療育システム(コロロメソッド)による具体的な対応法・療育方法を提示し、家庭療育プログラムを組みます。
幼稚園や学校に通いながら、ほかの療法とも併せてプログラムを実践することができます。
コロロメソッドとは
コロロでは「子どもの持っている力を最大限に伸ばし、社会の中で生きる力をつけていくこと」を目指して幼児から成人までの療育を行っています。
コロロメソッドとは、40年に渡る療育の実践の中で得た知見から体系づけられた「ことばが増える・伝わる・問題行動が減る」療育プログラムです。
コロロメソッドとは、40年に渡る療育の実践の中で得た知見から体系づけられた「ことばが増える・伝わる・問題行動が減る」療育プログラムです。
詳しくは、ホームページをご覧ください。
コロロ発達療育センター
コロロ学舎