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発達プログラム176号 「ことばの教え方」より

段階別 ことばの指導法③会話を教えるの記事をご紹介します。

私達は普段の生活の中で当たり前のように会話をし、コミュニケーションをとっています。

しかしことばの発達がゆっくりな子どもたちにとって「会話」を日常生活の中だけで習得していくのは難しいものです。

ここでは、パターニングされている質問に対して正しく答えることができる段階のお子さんに、どのように会話を教えていくのか、
実際の事例をご紹介したいと思います。

Nさん(支援学級 小2女児)
・自閉症スペクトラム
・挨拶やパターンで入っている日常会話はできるが、場面を思い出しての会話は難しい。


パターン反応にとどまる「ことば」

幼児期からコロロの教室に通っているNさん。

コツコツ積み重ねた療育の成果もあり、読み書きや計算などは学年相応のことが身についています。

冬休み明けのある日、私は久々に教室に通室してきたNさんに「お正月は何をしましたか?」と何気なく聞いてみました。

Nさんは少し考えて「たこあげとこま回しをしました」と答えました。

私はその答えに疑問を抱くことなく「誰としたのですか?」「どこで遊んだのですか?」とどんどんやりとりを進めていきました。

Nさんは多少のタイムラグはありつつも、「パパと」「公園」などとそれらしく応じます。

しかし、後ほどお迎えに来た保護者の方に確認するとそれは事実と異なる事が分かりました。

Nさんは、「お正月」というキーワードだけを聞いて、お正月にする遊びを答えていただけなのでした。

Nさんのことばの世界を知らない人からすると、一見会話が成立しているように見えます。

しかし、このやりとりは「会話」とは呼べません。

「お正月」というキーワードが刺数となり「こま回し」「たこあげ」という言葉が「反応として出てきた」状態です。

これではせっかくことばが増えていても「バターン反応」でしかありません。

このままではNさんは意思を伴う会話ができない…一対一の言葉のやりとりパターンの域を出られない…と思い、
「会話」の教え方を変えることにしました。

1、場面を思い浮かべて話すことを教える

まず会話をするためには、聞かれている質問の内容を聞いたとき、本人がその場面をイメージできているかが重要になってきます。

先ほどのお正月の質問は、Nさんにとってはイメージしにくかったため、
次の学習ではイメージしやすい「その日の給食の献立」について質問してみることにしました。

給食の献立であれば、私達も献立表から事実かどうか確認することができます。

事実とNさんの受け答えを照合していくことで、本人が会話をしながら場面をイメージできているかが分かるというわけです。

Nさんと対面で座り、しっかりと目が合ったタイミングで「今日の給食は何を食べましたか?」と質問してみたところ
「えっと…ごはん、大根の味噌汁、鋼、サラダ、牛乳」と実際に食べたものを思い出しながら答える様子がありました。

「鯛」や「サラダ」については、「鯛の香味あげ」「そくせき漬け」とメニュー名をその場で教え、Nさん本人にも復唱してもらいました。

次に給食に関連して「給食当番は何(の係)でしたか?」と質問してみたところ「小さいおかず」と即答することができました。

「Nさんが給食を食べる時に横に座っているお友達は誰ですか?」と聞いてみたところ
「うーんと…〇くんと^くん」と少し考えながら答えることができていました。

ただ、その後に質問した「Nさんの後ろに座っているお友達は誰ですか?」という質問に対しては場面をイメージするのが難しかったのか、
Nさんにとっては、後ろの席に座っているお友達までは気にして給食を食べていない可能性が高く、答えることができませんでした。

答えることができなかったというパターンで終わらないために後ろの席に座っていたお友達のお名前を教え、
もう一度同じ質問をして正しく名前を答えられたところで、その日の会話学習は終えました。

なお、給食の献立や給食当番、席順、お友達の名前については正しい答えをこちらが知っておく必要がありますので、
事前にお母様に聞いて、決して間違わないようにしました。

会話を教える上で、やりとりする内容は必ず確実であるという事が重要です。

会話学習の際には、指導する側が予め正しい情報を把握しておきましょう。

2.少し前の出来事を思い出しながら会話する

前回の学習で、直近の出来事でイメージしやすい内容であれば会話が成立することが分かりました。

そこで今度は週末にあった出来事について質問してみることにしました。

こちらも給食の献立の時と同様、お母様に週末どのように過ごしたのか事前に詳しく聞きました。

その際に「誰と・どこで・何をしたのか」を詳しく情報収集し、Nさんに質問する際の参考にしました。

しかし、前回は「数時間前の給食の献立」でしたが、今回は数日前の「週末の出来事」。

いきなり口頭で質問しても場面のイメージがあいまいな様子が見られました。

そこでまず、「思い出す」作業を目に見える文字のやりとりで行うことにしました。

文字でやりとりをすると場面が思い出しやすいのかスムーズに書き出すことができていました。

また、口頭やりとりの時のように単語で答えるのではなく、語尾に「~しました」と質問文と同じ形で答えることができており
語尾まで意識している様子が伺えました。

文字やりとりの直後に口頭で同じ質問をしてみたところ、先ほどよりも比較的スムーズに答えることができました。

そこで、文字でやりとりしていない新しい質問をしてみることにしました。



「他の動物は何がいましたか?」「その動物の色は?」「その動物の名前は?」…なんとNさんは追加の質問にも正権に答えることができたのです!

Nさんが週末の動物園を思い出しながら話しているのは明白でした。

Nさんの場合、「場面を思い浮かべながら話す」感覚を掴めたことが「会話」に繋がりました。

お子さんによって課題はそれぞれ異なりますが、まずはパターンでことばを増やすこと、
そしてそこにとどまらずその先の会話を見据えてステップアップを目指していかれると良いと思います。

会話学習の後日談


会話練習を重ねることでNさんに嬉しい変化がありました。

ある昼食時、ふとNさんと目が合うと「愛理先生、お茶を飲んでもいいですか?」と穏やかな口調で話しかけてくれたのです。

さらに飲み終わり、片付けた後には「できました」と報告も。

以前のNさんなら「お茶が飲みたい」「喉が渇いた」と相手も見ずに口走っていたことでしょう。

Nさんにとって、相手を意識しながら、ことばでコミュニケーションをとった場面であったことは違いないと思います。



その後も、お母様の体調が悪い時に自ら「お母さん大丈夫?」「良くなった?」など声をかけてくれて、
涙が出るほど嬉しかったと、お母様が話してくださいました。

今後もさらなる会話の向上に向けて、学習を続けてゆきたいです。



この記事をご紹介したのは…




コロロ発達療育センターはコロロメソッドを実践する療育機関です。

1983 年創立。自閉症、広汎性発達障がいなどの診断を受けた子どもや、
集団に適応できないなどの問題を抱える子どものための指導方法を研究・実践する療育機関で、
現在各地の教室で多くの子どもが療育を受けています。
コミュニケーションがとりづらい、問題行動やこだわり・パニックが頻発して家庭療育がままならないなど、
さまざまな問題に対し、独自の療育システム(コロロメソッド)による具体的な対応法・療育方法を提示し、家庭療育プログラムを組みます。
幼稚園や学校に通いながら、ほかの療法とも併せてプログラムを実践することができます。

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