発達プログラム No.142高機能自閉症・アスペルガー症候群 話ができる子へのかかわり方より
「進路選択相談室【学童編】」の記事をご紹介します。
進路選択相談室【学童編】
幼児期から学童期への大きな転換は就学です。学校見学をし、就学前の相談をし、やっと決めた小学校。
しかし、入学して終わりではありません。入学後も様々な悩みが出てきます。
普通級、特別支援学級、特別支援学校と進路選択は異なりますが、学童期の進路について寄せられた質問をもとに考えてみたいと思います。
*学校選び
Q1 自閉症、年長の男児です。
現在はコロロの幼児教室に毎日通っていて、半年後の学校生活に不安を感じています。
少しでもよい学校生活が送れるように、学校選びはどのような基準で選べばよいのでしょうか?
見学に行ったときに見るべきポイントがあれば教えてください。
A 最初の学校選び、皆さん頭を悩ませます。
入学の時でなくても「今年は良い先生」「今年ははずれ…」というお話はお母様との面談で多く伺います。
(中略)
しかし、自閉症のお子さんを育ててきた先輩MT(Mother Teacher)の学校選びの基準は違うようです。
具体的で実用性が高いので、そのままご紹介したいと思います。
①どんな集団か
学校見学に行った際に見なければいけないのは小1~小5のクラス。
全体的に落ち着いた雰囲気かどうかを見る。
普通級でも支援級でも特別支援学校でも、幼児期から学童初期はまだまだ環境につられやすいので「音」が静かな学校を選ぶ。
②何をしているか
「一人一人に合わせた指導」という名目の元、ごろごろと寝転がれるようなスペースがあるところ、Aさんのスペース(こだわりのおり紙ができるスペース)が個別にあるところは要注意。できるだけ集団で動いている学校にした。
③ 親が送迎しやすいところ
親が送迎しやすいということは、何かあったときにすぐに学校に行って相談がしやすい。
例えば、お友達をたたいてしまったり、授業中にいなくなってしまったりしたときにすぐに手が打てる。
そのためには、学校の先生と日頃からコミュニケーションをとっていく必要がある。
効果的だったのは「ご専門は?」と伺い、美術のご専門だったので、「うちの子こんな絵を描きます」とお見せし、絵の指導をしていただいたこと。
それがきっかけとなり、先生に感謝の気持ちをお伝えしていくうちにコミュニケーションがしやすくなった。
以上、3項目の回答、ほぼ皆さん同意見でした。
つまり、自閉症のお子さんの子育てがうまくいっているお母様は学校選びの際の基準が一緒です。
特に③についてのご意見は重要です。学校生活は学校にお任せではな<、一緒に解決していくという姿勢が必要なのです。
良いカリキュラムをやってくれるから、良い先生がいるから…・・と学校に対して療育を外注するような感覚でいては、大切な療育時間を削るだけでなく、お母様の「この子を育てる」という覚悟さえも削られてしまうのではないかと思います(前号29ページにも書かれています)。
学校選びはとても大切ですが、入学前に着席注視の時間を伸ばす、立位が10分できる、勝手にトイレにいくのではなく許可を取ってからトイレに行くなど、お子さんの体の準備も非常に大切です。入学後の学校生活を考えた準備を幼児期にしっかり行うようにしてあげましょう。
*安定した学校生活のために
Q2 自閉症、小学校三年生の女児です。普通級に通っています。
健常児と触れ合えることで選んだのですが、授業中も休み時間も補助の先生か母親がついている状態です。
授業中に席を離れたり、声が出てしまうこともありますが、母親がついているからと担任の先生からのかかわりはほとんどありません。
問題が起こるたび、担任、校長先生から特別支援学級に籍を移すことを提案されています。どうしたらよいでしょうか。
Q3 自閉症、小学校二年生の男児です。
現在、特別支援学級に通っています。
就学前の判定では特別支援学校と判定されましたが、特別支援学校では学習を進めてもらえないと思い、特別支援学級に通っています。
しかし、担任の先生は特別支援教育を学んでおらず、普通級の子どもたちのように接していて子どもが混乱して状態が崩れ、
泣いてしまうことが増えました。
状態の崩れを子どものせいにされ、特別支援学校への転校を繰り返し勧められています。
Q4自閉症、小学校5年生の男児です。
特別支援学校に通っていますが、授業でやっていることが毎年変わりません。
個別学習に至っては、何年も同じことの繰り返しです。
いくら家ではこんなことを学習していますと伝えてもなかなか取り入れてもらえません。
学校は学ぶ場ではないのでしょうか?
A Q2~Q4はコロロのお母様との面談でよく伺うお話です。
普通級、特別支援級、特別支援学校と状況は違いますが、担任の先生や学校に何かしてもらいたいというお母様の思いがにじみ出ています。
しかし、上記にも述べましたが、ただ学校にお任せでは学校生活はうまくいきません。周囲も本人も困った状況に置かれてしまいます。
そうなると、ご質問のような提案を学校側からされることになります。
どこに行ったとしても、お母様が人任せにせず、プログラムを立てていかなければ子どもの安定した学校生活は見込めません。
Q2の場合、お母様は学校に行っていて一見人任せにしていない印象を受けます。家ではこんなことはないのに…とがっかりしたお気持ちになられるお母様もいらっしゃるでしょう。
しかし、お母様のお話を伺うと、「学校での付き添いに疲れて、家でトレーニングができていません」とおっしゃる方がいます。
これではお母様の指示が入らなくなるのも当然です。
家庭と違い、学校は様々な刺数にあふれています。問題行動が起こっている学校でだけで何とかしようとしても決してうまくいきません。
まずは家庭での療育をしっかり行い、学校以外の刺数が多い場所(レストラン、電車など公共の場所)で、お母様の指示が通るようにしていかなければ、刺激にあふれた学校でお母様の指示を聞くということはできません。
Q3、Q4の場合、先生は子どものせいにして、お母様は学校のせいにして、このままでは状況は変わりません。
担任の先生や学校の状況を変えるよりも子どもの状態を改善していく方が将来のためにずっと必要なことです。
Q3の場合、学校を休み、ご家庭で状態を立て直すということも選択肢の一つとして考えられますが、
それはあまり長期間にならない方がよいでしょう。
集団に入らず、お母様と一対一で過ごすのは長期的に見てよいことではありません。
ですからこのような場合、私たちコロロスタッフはコロロのスクールプログラムをお勧めすることが多いのです。
ある先輩MTがおっしゃっていた言葉が印象的でした。
「普通級か特別支援級か特別支援学校かという選択も大切だが、それよりも学校生活に入る前に、
どれだけ反射の抑制や受け身行動ができるようになっているかが大切だ。
入学後も安定した生活を送るためには、常にこの2つはチェックが必要。この土台なくして、学習やコミュニケーションは絶対に伸びない」
全くその通りだと思います。
担任の先生や学校との良い関係性は必要ですが、担任の先生や学校のせいにするのはやめましょう。
安定した学校生活を送るためには、遠回りのようですが家庭療育が一番大切です。
この記事が載っている発達プログラム142号はこちら
この記事をご紹介したのは…
1983 年創立。自閉症、広汎性発達障がいなどの診断を受けた子どもや、
集団に適応できないなどの問題を抱える子どものための指導方法を研究・実践する療育機関で、
現在各地の教室で多くの子どもが療育を受けています。
集団に適応できないなどの問題を抱える子どものための指導方法を研究・実践する療育機関で、
現在各地の教室で多くの子どもが療育を受けています。
コミュニケーションがとりづらい、問題行動やこだわり・パニックが頻発して家庭療育がままならないなど、
さまざまな問題に対し、独自の療育システム(コロロメソッド)による具体的な対応法・療育方法を提示し、家庭療育プログラムを組みます。
さまざまな問題に対し、独自の療育システム(コロロメソッド)による具体的な対応法・療育方法を提示し、家庭療育プログラムを組みます。
幼稚園や学校に通いながら、ほかの療法とも併せてプログラムを実践することができます。
コロロメソッドとは
コロロでは「子どもの持っている力を最大限に伸ばし、社会の中で生きる力をつけていくこと」を目指して幼児から成人までの療育を行っています。
コロロメソッドとは、40年に渡る療育の実践の中で得た知見から体系づけられた「ことばが増える・伝わる・問題行動が減る」療育プログラムです。
コロロメソッドとは、40年に渡る療育の実践の中で得た知見から体系づけられた「ことばが増える・伝わる・問題行動が減る」療育プログラムです。
詳しくは、ホームページをご覧ください。
コロロ発達療育センター
コロロ学舎