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発達プログラム91号「自閉症児の自立歩行から走行へより
お子さんの歩行についてのご質問にお答えする記事をご紹介します。



Q1 年長になる息子の歩行についてご相談します。

毎日かかさず私と2人で手つなぎの歩行トレーニングを行っているのですが、息子は道端などにある小石を見ると拾って投げてしまいます

通行人の方にも当たりそうになることがあるため、気が気ではありません。

そのため道選びにはとても苦労するのですがこの行動をやめさせるためにはどうしたら良いでしょうか。


Q2 小学2年の男児の母です。

毎週月曜日は集団登校の日なのですが、いつも勝手に先に行ったり列を離れたりし、

興味のあるものを見るとそれについてしつこく質問したり、と上級生を困らせているようです

コロロのハイキングではそれなりに集団で歩けているようですが、7人の集団登校でもきちんと皆と歩いて行くにはどうしたらよいでしょうか。


コロロのハイキングはひと班で約20人〜30人、小学校1クラス程度の人数で2人ペアの手つなぎで集団歩行を行っています。

この集団が同じ速度でリズム良くまとまって歩くことにより、子ども達も感応し、

時として子ども達の持てる力以上の持続力、集中力を発揮することが出来ます。

ハイキングにはご質問のような反射的過多反応を示すお子さんが多数参加されます。

しかし、集団の力を活用することで反射的な行動は抑制され、目的的な歩き方が持続できるため、このような問題行動は最小限におさえられます。

この2つのご相談も目に見える症状は異なりますが、根本的には「歩く」という目的行動に集中できないことに原因があります。


A1小石に限らず、草花・空き缶・タバコ・マンホール等、目に入ったら触らずにいられず

大人の手を振りほどいてでも向かおうとするお子さんは、まだ身体機能が未分化な状態にあるといえます。

幼児教室の集会場面でもシャボン玉に突進し、目と身体・手が未分化であるお子さんは非常に多いです。

歩行中の小石に対する反応はこれと同じです。

大人と手つなぎで小石の多いコースは極力避け、先々のコースを見て小石があれば手つなぎを変えてみる等、

見ない触れない環境を作り手つなぎ歩行を確立させましょう。

もし小石が目に入り突進しようとした時は脇を抱えてでも動きを封じ、

見たけれど触らず通り過ぎたという新しいパターンを形成していくことが大切です。

このように数回阻止できれば反射パターンが消去されていきます。

しかし突進は反射行動ですから速さと勢いは並大抵ではなく止めきれない場合、

拾う→止められる→叱られる→反発(泣く・さらに突進しようとする)という悪い連鎖パターンを招く恐れがありますので、

お子さんに絶対に手を出させないという決意をもって臨んでください。

大人と手をつないでしっかりバランスをとって歩くことが一番ですが、

そうもいかない時は視界を狭める帽子やミトン等の手袋をはめる等拾うことができないようにしましょう。

また重いリュックを背負う、手荷物を持たせるなど意識レベルを上げる工夫も必要です。


     手荷物を持たせる

悪いパターンが消去されてきたところで、小石へは手を伸ばしても届かない程度の距離感から、

最終的には山道など小石のある刺の多いところをお友達との手つなぎで歩くことを目標にしましょう。


A2お母様との歩行状態はいかがでしょうか。

30分はきちんと手をつないで、あるいは前か後ろを適当な距離を保って歩けるでしょうか。

コロロの教室からの帰りでも時々先生と挨拶をしたあとびっくりするほどの速さで玄関を飛び出していくお子さんがいますが、

これもマイペースな反射的行動であり、後ろからお母さんが来る、と分かっての行動とは言い難いです。

手をつないでいてもあっちに行こう、と大人を自分の田う方へ強く引っぱったり、

ご所問のように余計なおしゃべりしながら歩くのもマイペース止行です。

コロロのハイキングでは20人程度の集団で、ほぼ一定のペースで手つなぎ歩行ができているのですから、

現在の生団登校では、1人で歩いているのなら、上級生に手をつないでもらうだけでも違うかもしれません。

しかし自立しての集団歩行に向けて、お母さんとの手つなぎに合わせるところから始めましょう。

お母さんが先に早歩きで進んで、多少引っ張られる形となってもきちんと合わせてついて来ることができるか、というところからみてみましょう。

合わせることに集中すればその目的に自ずと意識水準が上がり、常同行動やおしゃべりといった下位レベルの問題行動は自然と止まってきます。

早歩きに慣れたら急に速度をゆっくりにするなどペースに変化をつけても合わせる事ができるか試してみましょう。

お母さんの歩く速度をこまめに変え、しっかり合わせて歩くことができるようになっていたらユアペース歩行です。

手をつながず一定の距離を保って後ろを付いて歩く、前・真横を歩く等、ステップアップを図っていきましょう。

お母さん以外のご家族やお友達でも出来てきたらいよいよ実際の班で行ってみます。

まずは7人の班の一番後ろ(7番目)にお子さんが位置し、その後ろをお母さんがついて歩き、

前を歩く子との距離が離れそうな瞬間を見計らって声かけ等の意識付けを行いましょう。

次にお母さんの存在をフェイドアウトするため、7人の2番目に入れてもらい、

前を歩く上級生と後ろの子にはさまれる形で集団の意識を保つようにしましょう。

この時お母さんはお子さんの横に少しずつ距離を離していくよう位置し、意識付けをします。

前の子のランドセルに片手の平をぺったんとくっつけたまま歩く、ペったん歩行をさせてもらうようお願いしてみても良いでしょう。


      ぺったん歩行

このメンバーと一緒にこの場所で歩いていかなければいけないのだ、という意識が出来、

お母さんが遠くで見守る中良い
パターンを身に付けることができたら(約1週間)成功と言えます。

歩行はもとより、やはり反射的な行動の多いお子さんには歩行のみではなく、静止トレーニングが必要不可です。

反射的に手が出そうになるものの距離を徐々に近づけても手を出さずに座る、立つ、ことができる時間がどの位か、

少しずつ時間を延ばしていく必要があります。

もちろん無刺激の状態での持続時間も延ばしていかなくてはなりません。

それとともに、生活の中で「待つ」経験も意図的に取り入れていきましょう。

食事の前に10カウント数える、お母さんが靴を履いている間、重心を保って起立して待つこと等、意外と出来ていないのではないでしょうか。

歩行という動トレーニングとともに静のトレーニングも必ず比例して持続時間を延ばしていけるようにしましょう。

最後に、このような目に入った刺激に対する反射的な問題行動を改善するためのプログラムの基本をまとめておきます。


1、環境設定を行い反射パターンを消去する。

2.環境設定により消去できてきたところで誘発刺激(Q1のケースでは小石)を意図的に徐々に入れ、
  反射が出るタイミングを見計らって瞬間的に止める。


プログラムの要はタイミングです。

後手対応が繰り返されると反発を強めることになりかねません。

対応の結果、子どもの行動がどう変わったか評価をしながら進めていきましょう。

この記事をご紹介したのは…




コロロ発達療育センターはコロロメソッドを実践する療育機関です。

1983 年創立。自閉症、広汎性発達障がいなどの診断を受けた子どもや、
集団に適応できないなどの問題を抱える子どものための指導方法を研究・実践する療育機関で、
現在各地の教室で多くの子どもが療育を受けています。
コミュニケーションがとりづらい、問題行動やこだわり・パニックが頻発して家庭療育がままならないなど、
さまざまな問題に対し、独自の療育システム(コロロメソッド)による具体的な対応法・療育方法を提示し、家庭療育プログラムを組みます。
幼稚園や学校に通いながら、ほかの療法とも併せてプログラムを実践することができます。

コロロ学舎はコロロメソッドを実践する成人入所施設・放課後等デイサービス事業等を運営しています。

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コロロでは「子どもの持っている力を最大限に伸ばし、社会の中で生きる力をつけていくこと」を目指して幼児から成人までの療育を行っています。
コロロメソッドとは、40年に渡る療育の実践の中で得た知見から体系づけられた「ことばが増える・伝わる・問題行動が減る」療育プログラムです。

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