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見続けられない理由は身体の使い方にあった

ある幼児さんの学習がなかなかうまくいかず、他のスタッフとの学習の様子を観察したときのことです。
お子さんの様子を見て「だからできないのか!」と大いに納得し、ちょっと対応を加えたらすっとクリアしたのです。

頸部の反射を止めたら持続的に見ることができた

Mくんは年長さんの男の子です。
コロロの幼児教室ではデイリープログラムと併せて、定期的に学習の時間を設けています。
Mくんは1~2拍子の模写に取り組んでいます。
ただ、毎回動作模写から始め定位模写へ移行し、そこでMくんの集中は途切れ始めます。

※コロロの模写学習の初期段階では、目の前で書かれたお手本の |(縦線)、 ー(横線)、○(丸)を見て同じように書く動作模写と、予め書いてあるお手本を見て書く定位模写があります。これらの模写を発展させてひらがなが書けるように教えていきます。詳しく説明している書籍もありますのでよかったらご参照ください。文末にご案内しています。

  
模写用のお手本。A4ほどの白い紙の上半分にお手本を書き、お子さんが下に同じ線を書きます。
 
あまり根を詰めると学習自体に嫌な印象を持ってしまいそうなので、Mくんの様子をみて気持ちよくできた辺りで終了します。
すると次回別日の学習も同じように、動作模写から始め定位模写へ移行し集中が・・・という流れで、なかなかステップアップできずにいました。
動作模写を2~3枚繰り返すと、お手本の線を見る「目」が呼び覚まされるのですが、模写をひとつこなすと別の方向を向いて次の線をなかなか見てくれません。
模写の紙が変わる度に、お手本へ指差しだったり声かけだったりする意識づけが必要でした。
一拍子(1秒くらい)意識がつづくと目線が逸れるという運動リズムから抜け出せず、画数の多い模写に移行したいのにできないのです。

ここから、他のスタッフとの学習の様子を観察したときのお話になります。
他のスタッフとの学習も、同じように動作模写から定位模写へ進みます。
そして同じように毎回意識づけが必要です。
でも、ここであれ?と思うことが・・・
Mくん、ペンを持つと必ず顔が左方向に向いてしまうのです。
模写の紙を出され、これだよというように指差しされたお手本を見ても、ペンを渡されるとほぼ同時に左にくるり。
くるりとしながらも、お手本どおりに|や ーを書くのです。手元を見ずに。
頸部反射の一種だと思いますが、自動的に動いてしまうような印象でした。
一回一回くるりとしていたのでは、持続して見ることはできないですよね。
続けて見てもらうには、くるりをしないことが必要でした。


くるりをしないでできた!

Mくんの様子のおさらいです。

・お手本への指差しで目を向けられる
・何が書いてあるか確認もできる
・でも、ペンを持つと横を向いてしまう

試しに、Mくんの斜め後ろに座って、くるりと横を向くそのときに後頭部を軽く押さえてみました。
すると、ちょっと嫌そうながらも「①お手本→②ペン→③書くべき場所」の順に見ることができました。
それを3~4回繰り返すと、頭に触らなくても「お手本→ペン→書くべき場所」を見る動きが定着してきたのです。
目をどう使うかがわかり、それを何回か繰り返したことで、頸部の反射が出現しなくなったわけです。
Mくんは「次見て!」とか「ここだよ」といった声かけがなくとも淡々と目と手が正しく使えるので、穏やかな様子で模写をこなしていきます(行動を正されたり、繰り返し要求されないので穏やか)。
よく見てくれるので欲が出て2図形連続模写へ進めてもらいました。
こちらも目線をそらさずに、定位模写で「①1つめのお手本を見る→②書く→③2つめのお手本を見る→④書く」ができました。

 
2図形連続模写用のお手本。B4ほどの白い紙の上半分にお手本を書き、お子さんが下に同じ線を書きます。

学習がいやなんじゃない、身体がうまく使えなかったことができない理由だった

「この子は模写がいやなんだな」と漠然としたイメージを持ってしまっていたが、そうではありませんでした。
目を使って欲しいその瞬間だけ頭を固定してあげたことで、”見続ける”ということができ、持続時間が1秒ではなくなりました。伸びました。
もちろん、好きとか苦手などのお子さんの好みもしっかり観察し理解していきたいと思います。
ただ、目の前のお子さんの行動が”好みが理由故の行動”なのか、”身体の問題故の行動”なのかの見極めが、とても大切だと改めて感じた学習の時間でした。


 
『自閉症児のためのことばの教室 新発語プログラム① 無発語から発語までの31ステップ』



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コロロ発達療育センターはコロロメソッドを実践する療育機関です。

1983 年創立。自閉症、広汎性発達障がいなどの診断を受けた子どもや、
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現在各地の教室で多くの子どもが療育を受けています。
コミュニケーションがとりづらい、問題行動やこだわり・パニックが頻発して家庭療育がままならないなど、
さまざまな問題に対し、独自の療育システム(コロロメソッド)による具体的な対応法・療育方法を提示し、家庭療育プログラムを組みます。
幼稚園や学校に通いながら、ほかの療法とも併せてプログラムを実践することができます。

コロロ学舎はコロロメソッドを実践する成人入所施設・放課後等デイサービス事業等を運営しています。

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