〈コラム〉家庭でできる行動トレーニング「歩行の基礎」
発達プログラム154号「家族のかかわり方―父母・兄弟・祖父母―」より
家庭でできる行動トレーニング「歩行の基礎」の記事をご紹介します。
前文略
子どもたちの歩き方を見ていると、何かおかしいと感じることも多いかと思います。
それは、身体の前傾姿勢や後傾姿勢だったり、左右にぶれがちだったり、かかとがつかないつま先歩きだったり、
膝が上がらずにずりずりと靴をずって歩くなどの歩き方です。
膝が上がらずにずりずりと靴をずって歩くなどの歩き方です。
これらは直していきたい歩き方で、一番大事なのは何かと言うと、
「体幹を保った歩き方ができるか」
「自分で重心バランスをとって歩くことができるか」
ということです。
まずは立つということを意識してみましょう。
体幹を保ち、重心バランスをとって立つということは、地面に対して前後左右に傾かずに垂直に立つということです。
座禅などでも頭のてっぺんから糸で吊るされているように意識してくださいと言われることがありますが、
立つことも歩行もこのイメージを意識しておけばよいかと思います。
立つことも歩行もこのイメージを意識しておけばよいかと思います。
さらに走る時も同様です。
漫画などでは速く走る場面があると、かなり前傾姿勢になっている絵をよく見かけますが、
陸上選手の100メートル走の走りを見ると、前傾姿勢になっている人はいません。
陸上選手の100メートル走の走りを見ると、前傾姿勢になっている人はいません。
これは競歩でも同様です。
つまり地面に対して垂直に体幹を保って動くことが理にかなっているということです。
しかし、一人で歩かせても正しい歩行姿勢で歩き続けるというのは難しいものです。
なぜなら正しい歩行姿勢が分かっていないからです。だからこそ手つなぎで正しい歩行姿勢を教えることが大事になるのです。
手のつなぎ方
たまに「うちの子は手をつながないのですが」という話も聞きますが、
まず知っておいていただきたいのは、手をつなぐことが嫌いだからつながないということではない、ということです。
まず知っておいていただきたいのは、手をつなぐことが嫌いだからつながないということではない、ということです。
手をつながないのではなく、手ばなし反射や屈曲反射などの原始反射が出て手をつなげないだけなのです。
ですから、これらの反射が出ているときに強引に引っ張ったり、抱えるようにするのは厳禁なのです。
手つなぎの仕方が原因で反発につながることにもなるので気をつけてください。
ではどうするかと言うと、子どもの少し後ろから近付いて、肘が伸びて腕が下がっているタイミングで子どもの手の平を下から支えるように、大人の手の平をそっと添えるようにしてみてください(図1)。
また、屈曲などの反射が少ない場合は目の前に手をさし延ばすようにすれば子どもから握ってきますので、そこで強く握ったり引っ張ったりすることなく、そっとつないで少しゆっくり目に歩き始めましょう。
身体のブレを直す
手をつないだら、体幹を保ち、重心バランスをとって歩けるようにするため、身体のブレを直していかなくてはなりません。
では具体的にどう直すかですが、よくあるのはおなかを突き出すようにして引っ張られながら歩くパターンです(図2)。
こうなる原因は大人の手の高さにもあります。
気をつけの姿勢から前ならえをしてみてください。
頭の位置が少し後ろに下がりますよね。
つまり腕が地面と平行もしくは上に上がると、自然と引っ張られ歩きの姿勢になってしまうのです。
また、大人も子どもが歩かないと手を後ろに伸ばして引っ張るほうが楽になるため、この形になりがちなのです。
この形になると引っ張られるほうもさらに体重を後ろにかけるようになっていくので、悪循環になります。
だからこそ、大人の手は下げるようにして、子どもに自分の横を歩かせるように意識してください。
引っ張る手は体の少し前が良いです。
イメージ的には斜め下前方に向けて力のべクトルが向いている感じです(図3)。
だからこそ、大人の手は下げるようにして、子どもに自分の横を歩かせるように意識してください。
引っ張る手は体の少し前が良いです。
イメージ的には斜め下前方に向けて力のべクトルが向いている感じです(図3)。
反対に前傾になりがちなパターン(図4)に対しては、良く歩くためあまり気にせずに歩かせがちですが、これを続けると常に自分が行きたい方向に歩いてしまい、マイペースが強くなり大変になることもあるので、姿勢の問題だけではなく注意が必要です。
これに対して基本的には、ぺったん歩行がお勧めです。これは前を歩く大人の背中に手をぺったんさせて歩くようにする方法です(図5)。
先程とは逆でペッタンさせる位置を上の方に調整することで前傾姿勢も直せますし、このようにすれば自分の後を大人がついてくるというのではなく、大人のペースに合わせて歩く練習にもなるため一石二鳥となりますよ。
また、前傾や後傾をくり返すお子さんもいます。
これは歩き自体がまだ未熟な場合に多く見られます。
この場合はどの形で歩くのが良いのかを教えるために、後傾で歩いている形から前傾になる途中でよい姿勢になる一瞬を逃さずにその状態を少しでも長くなるように、その瞬間に歩くスピードのペースを合わせてあげるようにします。
少しでも正しい歩行姿勢が続くように介助するところから始めましょう。
左右にぶれやすいパターンでは(図6)、原因は色々ありますが、基本の姿勢を維持させるためにはできるだけ二人の距離を近づけて歩くようにしてみてください。
横に引っ張られるために大人の腰が横に逃げてしまうこともたまに見られますが、これは良くない形です。
大人はバランスを崩すことなく、地面を踏みしめるように歩くことがポイントです。
そうすれば横にずれにくくなるはずです。
こちらの手を体の横に固定して横に行かせないようにする方法も良いでしょう。
しかし、残念ながらそれでもずれてしまう場合もあります。
その場合にやめたほうが良いのは、手が伸び切ったときに鎖でつながれていたかのように急にガッと止めてしまう方法です。
これでは衝撃が強いので反発や座り込みを誘発しやすくなります。
横に行かせて止めるのなら強めのゴムをイメージしていただいて、伸びたゴムを戻すように介助しましょう。
何かを取りに行くのを止められないようでしたら、ユアペースで取らせるようにして「取られてしまった」のではなく「取らせてあげた」という状況を作りましょう。
行こうとする前に先に取りそうなものを用意していて、それを渡すのも良い方法です。
つまり、マイペースな動きなのですがそれをユアペースに自然と変えていくのです。
また、このような子どもは道の端を歩きたがることも多いので、電柱などの危険物があるときに早めに軽く引っ張り、ユアペースで引っ張られて直されるということも意図して入れるようにしていくと指示が入りやすくなりますよ。
すり足で地面をずって歩きがちな場合は、膝を使えていないことも考えられます。
これは山歩きで根っこが這っているような道を、根っこに引っかからないように意識して歩かせるのがベストです。
家の近所で歩くときは意図的に歩道橋などの階段をコースに組み込むのも良いでしょう。
もちろん過去に紹介した行動トレーニングなども参考にしてください。
歩幅を意識する
歩き始めた赤ちゃんが、よちょち歩きからある程度歩けるようになる過程で、大きく変化していくのは歩幅です。
しっかり歩けるようになるのに従って歩幅は広くなっていきます。
ではどうすれば歩幅が広くなるかですが、それは腕を振れるかどうかなのです。
ピンとこない方は、
腕を振らずに歩く。
普通に歩く。
腕を後ろに大きく振って歩く。
という3種類を試してみてください。
腕を振らずに歩く。
普通に歩く。
腕を後ろに大きく振って歩く。
という3種類を試してみてください。
順番に歩幅が広がるのが分かるかと思います。
子供たちを見ていても腕を前には振れても後ろにはあまり振れない子もたくさんいます。
子供たちを見ていても腕を前には振れても後ろにはあまり振れない子もたくさんいます。
短距離走の選手なのに上半身も鍛えているのは腕の振りを大事にしているからでもあります。
ですから歩行では手つなぎで歩くときに、歩くのが良くなってきたら腕を振って歩くように介助してあげましょう。
ただし、無理に振りすぎるように介助すると逆にバランスを崩してしまうので、これは頭の隅にとどめておくくらいにしていただければよいでしょう。
ただ両手が振れればさらに良いリズムで歩けるようになるはずです。
この時に二人三脚のようにして歩幅を合わせて歩くように介助してあげると、バランスがとりやすくなるので意識してやってみてください。
正しい介助で歩かせることができると、子どもは自分で重心のバランスをとって歩けるようになっていきます。
こうなると大人も余計な力を使わずに歩かせることができます。
つないでいる手が軽くなったと感じればうまくいっている証拠です。
身体を地面に垂直にまっすぐにして足はかかとから地面につき、つま先が最後に離れるようにし、手を軽く振って歩くというのが理想の形だと理解し、それに近づくように意識して療育を進めていきましょう。
正しい形で歩かせることができるようになると、本人たちも楽に歩けるので指示も入りやすくなりますよ。
この記事をご紹介したのは…
1983 年創立。自閉症、広汎性発達障がいなどの診断を受けた子どもや、
集団に適応できないなどの問題を抱える子どものための指導方法を研究・実践する療育機関で、
現在各地の教室で多くの子どもが療育を受けています。
集団に適応できないなどの問題を抱える子どものための指導方法を研究・実践する療育機関で、
現在各地の教室で多くの子どもが療育を受けています。
コミュニケーションがとりづらい、問題行動やこだわり・パニックが頻発して家庭療育がままならないなど、
さまざまな問題に対し、独自の療育システム(コロロメソッド)による具体的な対応法・療育方法を提示し、家庭療育プログラムを組みます。
さまざまな問題に対し、独自の療育システム(コロロメソッド)による具体的な対応法・療育方法を提示し、家庭療育プログラムを組みます。
幼稚園や学校に通いながら、ほかの療法とも併せてプログラムを実践することができます。
コロロメソッドとは
コロロでは「子どもの持っている力を最大限に伸ばし、社会の中で生きる力をつけていくこと」を目指して幼児から成人までの療育を行っています。
コロロメソッドとは、40年に渡る療育の実践の中で得た知見から体系づけられた「ことばが増える・伝わる・問題行動が減る」療育プログラムです。
コロロメソッドとは、40年に渡る療育の実践の中で得た知見から体系づけられた「ことばが増える・伝わる・問題行動が減る」療育プログラムです。
詳しくは、ホームページをご覧ください。
コロロ発達療育センター
コロロ学舎