〈コラム〉高機能自閉症児と体幹支持〜出来ないのはやる気の有無より身体の問題が大きい~
発達プログラム145号 ―自立のための身体づくり― すべてにつながる「体幹」より
この記事をご紹介したのは…

高機能自閉症児と体幹支持〜出来ないのはやる気の有無より身体の問題が大きい~の記事をご紹介します。
この5年間で、高機能自閉症スペクトラム障害の子ども達の相談がめっきり増えました。
一見普通に会話ができ、IQも境界線ラインから150までと様々ですが、IQとは関係なく、皆、適応上の問題を多かれ少なかれ抱えてやってきます。
そして、この子達に共通していえること、それが「体幹支持が出来ていない」ということなのです。
コロロのスタッフは、子どもの体幹支持が出来ている・いないということは、歩き方や座り方を見ればすぐにわかりますが、
初めて来られた親御さんにそのことを伝えると怪訝な顔をされます。
コロロのスタッフは、子どもの体幹支持が出来ている・いないということは、歩き方や座り方を見ればすぐにわかりますが、
初めて来られた親御さんにそのことを伝えると怪訝な顔をされます。
「うちの子は(多動だから)足腰が鍛えられている。転びそうで転ばない。ジャングルジムは2歳になる前から頂上まで登れた。」
というような誤解も多く、体幹の視点はまずありません。
というような誤解も多く、体幹の視点はまずありません。
しかし私は、初めてコロロに来た子どもを見て体幹支持が出来ていると感じたことは実は一度もありません。
やはり、早い子でも3年以上の療育を経てやっと体幹支持が出来てきたなと感じます。
高機能自閉症児の問題は体幹から改善できる
まず、M君の事例から考えてみます。
高機能自閉症のM君は、コロロに来た当初はかなりのマイペースで、ちょっと嫌なことがあると暴言を吐いたり、
目が合うと一方的なおしゃべりが始まるので、スタッフは目を合わせず、「話さない時間」を作ることを心がけなければなりませんでした。
目が合うと一方的なおしゃべりが始まるので、スタッフは目を合わせず、「話さない時間」を作ることを心がけなければなりませんでした。
手の静止トレーニングを促すと「俺はこれが一番苦手なんだよな」とつぶやいていたのを思い出します。
正座もすぐに崩れやすく、全てに於いて自分で重心をとる自体内保持が出来ません。
正座もすぐに崩れやすく、全てに於いて自分で重心をとる自体内保持が出来ません。
そのため、意識レベルは下がりやすく、独り言や手の常同行動が多く見られました。
歩行でも、友達と手をつなぐことは出来ても、意識して握り続けられず、すぐに手が離れてしまう、そんな状態からの出発でした。
毎日の歩行で徐々に握り続けられるようになったものの、お友達の手を引いて歩くという段階になると、
手と腕だけに力を一瞬だけ入れて引っ張る危ない歩かせ方になり、手つなぎ相手によっては介助が必要でした。
手と腕だけに力を一瞬だけ入れて引っ張る危ない歩かせ方になり、手つなぎ相手によっては介助が必要でした。
しかし、夏合宿を2回経験し、毎日歩いた2年後の現在は、椅子の着席時、背もたれに重心をかけず、腰に重心を置いて座れます。
学習中も、30分以上正座が出来、歩行では、小さい子の手を引いて歩くことが上手になってきました。
しかし何と言っても体幹支持が出来て変わったことは、独り言、一人笑いがなくなったことです。
学習中も、30分以上正座が出来、歩行では、小さい子の手を引いて歩くことが上手になってきました。
しかし何と言っても体幹支持が出来て変わったことは、独り言、一人笑いがなくなったことです。
また、以前の歩行スタイルは顔が下を向きがちで、意識レベルは下がりやすく、よって、目が合わない状態でしたが、
現在は前を向いて歩くようになったので、よく目が合い、コミュニケーションがとりやすくなりました。

現在は前を向いて歩くようになったので、よく目が合い、コミュニケーションがとりやすくなりました。

日中活動中のM君の意識レベルが安定してきたことがわかります。
このように、体幹がしっかり出来てくると、意識レベルがガクンと下がることが減ってきます。
このように、体幹がしっかり出来てくると、意識レベルがガクンと下がることが減ってきます。
逆に体幹支持が出来ていない子ほど、意識レベルは頻繁に下がりやすく、さっきまで機嫌が良かったのに、
いきなり「触んなよ」と接触過敏からの他害(少し触れただけで攻撃する)になったりします。
いきなり「触んなよ」と接触過敏からの他害(少し触れただけで攻撃する)になったりします。
また、会話がよくできるので話せばわかると思われていますが、意識レベルが下がると、大脳新皮質の機能が下がるため、
ことばのコミュニケーションがうまく機能せず、ことばの反発反射になりがちです。
ことばのコミュニケーションがうまく機能せず、ことばの反発反射になりがちです。
その他、一つのことに固執してしまうこだわりが顕著になり、自分がこだわっている思想や思い込みを延々母親に話し、
聞かないと「どうせ僕なんかいなくなればいい」と自虐的になったり、家庭内暴力につながることさえあります。
聞かないと「どうせ僕なんかいなくなればいい」と自虐的になったり、家庭内暴力につながることさえあります。
やはり、体幹支持の崩れは意識レベルの低下のサインでもあり、そのことはコミュニケーションや問題行動と密接に関係しているのです。
高機能自閉症児への問題に対する誤った解釈
さて、高機能自閉症児の体幹が出来ていない状態とはどのようなものか見ていきましょう。
まず
①猫背(気味)は多いです。座位では、重心がへその下辺りに定まらず、前傾しやすいです。
①猫背(気味)は多いです。座位では、重心がへその下辺りに定まらず、前傾しやすいです。
②正座がすぐに崩れてしまいます。
これは、体幹を保つことが出来てないからで、足が痛いわけではありません。
「足が痛いの?」と大人が質問をするからそのまま「足が痛い」と言ってしまうのです。
その他、正座をしながら一定の間隔で、お尻が浮いて膝立ちになる子もいます。
お尻にも反射があるためお尻が浮いてしまうのですが、それを次の活動が待てなくてそわそわするといったやる気のあるものとしてみられがちです。
③首の後ろの筋肉が弱いため、重力に負けて顔は下を向きがちです。
一方、不快なことがあると、首を後ろに反って、天を仰ぐような恰好をする子どももいます。
歩行をすると、首で頭を支えられず、必然的に顔は下を向きがちです。
④手つなぎ歩行では、そもそも手つなぎ自体を「汚い」と言って拒否することが多いです。
また手はつなげても、体幹を軸にして、腕、指、腰、足を協応させて、力を出し続けながら小さい子の手を引いて歩ける子はまずいません。
列を見る力も弱いため、自分の身体を列に合わせて修正出来ず、列からはみだしてしまいます。
一見何の問題もないように見える有名私立高校のお兄さん(高機能児)に、中学生の自閉症S君の手つなぎを頼んだ時のことです。
一見何の問題もないように見える有名私立高校のお兄さん(高機能児)に、中学生の自閉症S君の手つなぎを頼んだ時のことです。
思い通りに動かないS君を腕の力だけで乱暴に引っ張ってしまい、自分の腰に重心をおいて、一定の力で手を引くことが出来ませんでした。
挙句、自分の思い通りに動かないS君に暴言を吐きはじめ、危険を感じて別な子どもとの手つなぎに変えました。
合気道をしていて、背筋は綺麗なお兄さんでしたが、やはり体幹支持が確立しているとは言えません。
先日会った5歳の男児は、挨拶時、立っている時は母親に寄りかかり、椅子に座るとズルズルと床に向かって下がってしまうので、
正座を促してみましたが、今度は机によりかかり、頭を机に伏せったまま積み木を積み、続いてその姿勢のまま字々き始めました。
この反応は、自分の身体の重心の自体内保持(体幹支持)が出来ていないために起こる身体の状態です。
先日会った5歳の男児は、挨拶時、立っている時は母親に寄りかかり、椅子に座るとズルズルと床に向かって下がってしまうので、
正座を促してみましたが、今度は机によりかかり、頭を机に伏せったまま積み木を積み、続いてその姿勢のまま字々き始めました。
この反応は、自分の身体の重心の自体内保持(体幹支持)が出来ていないために起こる身体の状態です。
ところが、会話はよく出来るので、お母様は身体の問題とは捉えられず、「恥ずかしいから母に寄りかかり」、
「やる気があればどんどん一人で出来る(歩く)」、「やる気がないから机に寄りかかってしまう」と解釈されていました。
このように、出来ないことを何でも「気持ち」で捉えている専門家、親御さんは多いかと思います。
「やる気があればどんどん一人で出来る(歩く)」、「やる気がないから机に寄りかかってしまう」と解釈されていました。
このように、出来ないことを何でも「気持ち」で捉えている専門家、親御さんは多いかと思います。
興味のあるものはできる、でもやる気がないから出来ない、だからやる気を出させることが大事という考え方では、
体幹を作る観点の療育はなされないため、いつまでたっても子どもは意識レベルの保持が出来ません。
仕事は時にはつまらない時があるもので、その時仕事しなくてよい社会などありません。
体幹を作る観点の療育はなされないため、いつまでたっても子どもは意識レベルの保持が出来ません。
仕事は時にはつまらない時があるもので、その時仕事しなくてよい社会などありません。
体幹支持が出来ていれば、それ程のやる気がなくてもほどほどに注視持続が出来、ある程度の意識レベルを保持出来ます。
その母の主訴は「気持ちのコントロールが出来なくて、気に入らないことがあると衝動的に他害する」ということでしたが、
実は、気持ちのコントロールより先に、身体のコントロールを覚えさせていくのが良策です。
自閉症児が一般社会で働くうえで必要なことは何でしょうか?
実は、気持ちのコントロールより先に、身体のコントロールを覚えさせていくのが良策です。
自閉症児が一般社会で働くうえで必要なことは何でしょうか?
それは、意識レベルの波が穏やかで、ある程度高めの意識レベルの保持が出来るということではないかと思うのです。
高い意識レベルを保持していくには、長時間の体幹支持が必要で、それが出来てはじめて可能になってきます。
高機能自閉症児は言葉を話せるが故に、心理的解釈に基づく対応のみなりがちで、体幹支持を作る観点の療育がおざなり傾向にあります。
高い意識レベルを保持していくには、長時間の体幹支持が必要で、それが出来てはじめて可能になってきます。
高機能自閉症児は言葉を話せるが故に、心理的解釈に基づく対応のみなりがちで、体幹支持を作る観点の療育がおざなり傾向にあります。
もう一度原点に戻り、本号で紹介された療育プログラムを家庭で取り組みましょう。
この記事をご紹介したのは…

1983 年創立。自閉症、広汎性発達障がいなどの診断を受けた子どもや、
集団に適応できないなどの問題を抱える子どものための指導方法を研究・実践する療育機関で、
現在各地の教室で多くの子どもが療育を受けています。
集団に適応できないなどの問題を抱える子どものための指導方法を研究・実践する療育機関で、
現在各地の教室で多くの子どもが療育を受けています。
コミュニケーションがとりづらい、問題行動やこだわり・パニックが頻発して家庭療育がままならないなど、
さまざまな問題に対し、独自の療育システム(コロロメソッド)による具体的な対応法・療育方法を提示し、家庭療育プログラムを組みます。
さまざまな問題に対し、独自の療育システム(コロロメソッド)による具体的な対応法・療育方法を提示し、家庭療育プログラムを組みます。
幼稚園や学校に通いながら、ほかの療法とも併せてプログラムを実践することができます。
コロロメソッドとは
コロロでは「子どもの持っている力を最大限に伸ばし、社会の中で生きる力をつけていくこと」を目指して幼児から成人までの療育を行っています。
コロロメソッドとは、40年に渡る療育の実践の中で得た知見から体系づけられた「ことばが増える・伝わる・問題行動が減る」療育プログラムです。
コロロメソッドとは、40年に渡る療育の実践の中で得た知見から体系づけられた「ことばが増える・伝わる・問題行動が減る」療育プログラムです。
詳しくは、ホームページをご覧ください。
コロロ発達療育センター
コロロ学舎



