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発達プログラム123号「集団行動Q&A」より

時間割へのこだわり の記事をご紹介します

Q

小学校の特別支援級で一年生のクラス担任をしています。
皆が見通しを持って生活できるように、絵や写真を使って、時間割を分かりやすく見せるよう工夫しています。
けれども、一人の女の子が、時間割へのこだわりが強くなってしまい、困っています。
授業がのびたり、行事の練習などで時間割が変更になったりすると大変不機嫌になり、泣き叫んでしばらくおさまりません。
体育の時間がなくなったことを伝えても、一人だけ体操着に着替えて体育館に走って行って、しばらくの間戻れなくなり、
副担任がついて体操をしてから連れ戻したこともあります。
先日の避難訓練では、授業を中断することが納得できず大パニックになってしまい、
本当に災害があったらどうなるのだろうかと、心底不安になりました。
どのように伝えていけば、時間割の変更を受け入れられるようになるでしょうか。



A

時間割通りに過ごせるということは一見良いことのようですが、毎日それを繰り返していると、
変更されたときに臨機応変な対応ができないという問題が生じます。

これは、時間割(スケジュール)が子どもの行動を決定する要因になっていて、周囲の人たちに合わせて行動するというパターンができていないからです。

自閉症児への支援のために、スケジュールを分かりやすく伝える必要性がさかんに言われており、
実際、見通しが立つことで行動が落ち着くこともあります。

しかし、自閉症児のパニックは、「見通しが立たないこと」よりも、
「自分の見通し(いつものパターン)とは違った」「予定を立てていたのに突然予定が変更された」といったときに起こることが多いのが現実です。

家庭、学校、地域社会の中で生きていく、もっと大きく言えば自然の中で生きていくには、予測不可能な変更はつきものです。

周囲の変化に合わせて、自分の行動を変えていくことが常に求められるのが、社会生活です。

ですから自閉症児の教育においても、スケジユールに合わせて行動するだけでなく、人に合わせて行動することができるよう教える必要があります。

スケジュールの変更を伝える手段を工夫するだけではなく、
「スケジュールは予告なしに変更されることもあり、変更されても騒がないでいられる=スケジュールの変更に慣れる」
というパターンを学習させることを考えていただきたいと思います。

それでは、スケジュールへのこだわりを崩し、変更に慣れるためのプログラムをご紹介しましょう。

①小さな変更に慣れる

時間割にこだわりのある子どもの場合、時間割以外にもスケジュールに関する細かいこだわりがあるのではないでしょうか。

まずは、あまり大きな抵抗がなくできるところから、「いつもと違う」「変更」の練習をしましょう。

<小さな変更の例>
・先生の指示で、定刻より早めに授業を切り上げて休み時間にする
・チャイムがなる前に授業を始める
・違う部屋で授業を行う(屋外や別の教室など)
・教材の位置をいつもと変えておく
・教材の使い方のバリエーションを増やす
・通常の流れとは違っていても、先生の指示に従えるようにする

こうして徐々に時間割よりも、先生や集団の動きに注目させ、自分の行動を他に合わせられるようにしていくのです。

気をつけなければいけないことは、パニックを起こさないで、これらの変更を行うようにするという点です。

パニックは一度起こしてしまうと、パターンになり、類似した場面でも起きるようになることがよくあります。

ですから、もっとも受け入れやすそうな方法から取り入れ、さりげなくスケジュール変更に慣れさせていくとよいでしょう。

②時間割の変更

時間割を急きょ変更するというパターン崩しを取り入れ、スケジュールが変わることに慣れさせていきましょう。

①のような小さな変更を積み重ね、パニックを起こさずに応じられるようになってきたら、時間割そのものを変更してみます。

これも強引に行ってパニックを起こさせてはいけません。

例えば、黒板に時間割の表を貼っているような場合は、本人の目の前で時間割を入れ替えるなどしてもよいでしょう。

受け入れられるようになってきたら、突然時間割を入れ替える、時間割表のない日をつくる、などのパターン崩しを行うと良いでしょう。

③ 家庭でのスケジュール変更

学校でこだわりがあるということは、家庭生活においてもスケジュールのこだわりを持っている可能性が高いです。

家庭での様子を把握し、生活全般においてもこだわり崩しをしていくことが大切です。

家に帰ってからのスケジュールの順番、お手伝いの内容なども、毎日同じだとパターンになり、こだわりになってしまいます。



学校の先生とお母さん、お父さんが連携して、
「いつでも、どこでも、だれとでも」穏やかに過ごせる適応力を身につけられるよう支援していきたいですね。


この記事をご紹介したのは…




コロロ発達療育センターはコロロメソッドを実践する療育機関です。

1983 年創立。自閉症、広汎性発達障がいなどの診断を受けた子どもや、
集団に適応できないなどの問題を抱える子どものための指導方法を研究・実践する療育機関で、
現在各地の教室で多くの子どもが療育を受けています。
コミュニケーションがとりづらい、問題行動やこだわり・パニックが頻発して家庭療育がままならないなど、
さまざまな問題に対し、独自の療育システム(コロロメソッド)による具体的な対応法・療育方法を提示し、家庭療育プログラムを組みます。
幼稚園や学校に通いながら、ほかの療法とも併せてプログラムを実践することができます。

コロロ学舎はコロロメソッドを実践する成人入所施設・放課後等デイサービス事業等を運営しています。

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